制作の背景とねらい

s842009-06-08


 飯田さんを撮りはじめたのは、
ほんの些細なきっかけです。
カメラマンの若尾が、池袋在住ということもあって、
スガモプリズンについて書かれた飯田さんの著作を、
たまたま手に取ったのがそもそものはじまり。
著作に感銘を受けた我々は、東条元首相らスガモで処刑された戦犯たちや、
後に政財界のトップに君臨し、歴史に名を残した人々とは異なる、
一人の元BC級戦犯に出会いました。


 飯田さんの半生は、およそ半世紀後に生まれた我々には
想像をつかぬ程、重厚な“物語”に満ちていました。
そして、“昭和の闇”の数々にも決して屈しない意志の力、
タフでチャーミングな人間性を前に、アウトプットの形も見えぬまま
撮影は始まりました
(主なスタッフは皆、フリーランスとして映像制作に関わっていますが、
ジャーナリストでも映画製作者でもありません)。
振り返ると、要するに飯田さんの“生き様”に惹かれたのだと思います。


 “戦争”“薬害”“昭和という時代”“個と公”“家族”…。
当ドキュメンタリーには様々なテーマが内包されていますが、
まずは、長きに渡って“昭和の闇”の数々と戦い続け、
86歳となった現在もなお、何かを後世に伝えようと試行錯誤を続ける
「飯田進という物語」を知ってもらいたいと考えています。


(文:構成・演出 伊藤)